
高校生のための「エネルギーと環境」コンペティション2005
〜都市と田園のeco住宅〜 入賞作品発表
2005年度のコンペティションには、100点を超える作品が集まりました。
多数のご応募ありがとうございました。 厳正な審査の結果、選出された入賞作品を発表いたします。
○最優秀賞


棚田と住まうあなぐら生活のエコロジー/大高夏紀さん 加藤周平さん
(静岡県立静岡工業高等学校 3年) |
講評: |
この作品は、棚田を日本の農業の象徴であり日本人の生き様を象徴する風景と捉えることを計画の出発点とし、災害の防止、風景の保全、生態系の維持など、計画全体にわたり環境工学の視点から次世代の暮らし方まで、注意深く案が展開してゆく美しい手書きの表現によるプレゼンテーションは見る者を深く納得させる説得力に溢れています。また、ソルパック構法による基礎の提案や稲わらを断熱材としてRCの壁面に木舞によって留める土壁のディテールの提案、日射、採光、空気の流れに関して、セットバック状の建築が持つ欠点を認識し、それに対する回答を断面、ディテールのレベルまで考えて用意するなど、空間と技術工学的解法が一体となった有機的ともいえる提案は他の案と比べて群を抜いています。何よりも、技術的総合性を持った「美しい棚田の風景の保全と共に暮らす住まい方」の提案として「こうあって欲しい豊かな未来の風景」が美しく提示されている点が審査委員全員に高く評価されました。 |
建築家
/ 芝浦工業大学教授 堀越英嗣
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○優秀賞

スポンジハウス/竹田純平さん (米子工業高等専門学校
3年) |
講評: |
部門設定根拠
1 平・立・断面図、透視図等が記載されている。
2 A2、2枚の規模作品であり、「設計・デザイン」に該当する。
応募規定(理念)との関係
1 「都市住宅密集地」の理念への配慮はないが、設計の概要は都市住宅に該当する。
2 「涼しく過ごせる住宅」以外に冬場の断熱対応も考慮している。
3 風、緑の対処はない。
評価(良好事項)
1 スポンジの蓄水による冷暖房のエネ・環境対応は、奇抜なアイデアである。
2 手動(電動不用)の冷暖房設備であり、環境効果が大きい。
3 表現は比較的良好である。
評価(課題)
1 スポンジの蓄水による冷房、断熱効果のデータを記載する必要性がある。
2 スポンジ蓄水の蒸発・断熱機能システムを明確でない。また、軒高2mに近いスポンジ壁面の
内部構造の説明が必要である。
3 部屋の開口部(窓)の確保が十分でない。スポンジ壁面の一部に丸窓などを設置すればよい。
4 壁面の一部に筋交を入れ、ラーメン構造を改善することも考えられる。 |
愛知県立愛知工業高校校長 堀口通安
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風こみち/鬼頭一誠さん 鈴木佐英未さん(三重県立四日市工業高校
2年) |
講評: |
この案の優れている点は、先ず最初に、典型的な2つの性格、VoidとSolidとで、明快に空間の性格を、2分して構成していることである。これは、夏と冬昼と夜、開放性と内向性という、典型的な要求の違いに対応できて巧みである。概して、どちらかの性格で、多くは開放性のみで徹底しがちであるが。典型的で、尚かつ重要な2つの性格を、併置していることの意味の深さは、生活の様々なシーンを思い描き、それをもう1度再構成した、複雑思考の結果であろうと推察する。Void部分は、更に建具で分割可能になっていて、ツタを絡めるフレームと通りを揃え、内外へ伸びるのも芸が細かい。
日照-日影、通風、熱をローテクでコントロールする事は、住まいのエコロジィーの基本である。
次ぎに優れているのは、この風が抜け、風景のフレームにもなるVoidの部分の屋根架構である。ここに掛けられた、幕/テントが軽やかに波打ち、正に風が抜け、ぱたぱたと音を立てそうである。風景にもリズムを生み出す。多様な暮らしのシーンを引きだす、この明快に単純化された、空間と架構は、正に、組み合わせの妙/Just
Matchであろう。 |
建築家 笠島淑恵
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風舎 −ふうしゃ−/高柳秀明さん(米子工業高等専門学校
3年) |
講評: |
本作品は,「風舎」というテーマ名そのものから何を意図しているのか直截的,明確
に伝わり、また,提出図面の2枚の写真、すなわち、防風林と円筒形のカラフルな写真を見ただけで,表現すべきことが瞬時に理解することができました。審査員一同から、ネーミングのセンスのよさとユーモア性ならびに卓越した構想力と表現内容,表現技術の完成度の高さなどの高い評価が得られました。ただし、例えば季節毎の風向・風速(風配図)を示しているならば、さらにリアリティーの高いものとして、また、冬の鉛色した空を背景としたならばカラフルな風車も若い感性としては楽しいことはよく理解できますが、夏のような青空をバックとし,あたり一面緑色の背景には、カラフルな色でもよいのですが落ち着いた濃緑色のような、つまり、季節に応じた色にしたらこの風車がより楽しめるのではないでしょうか。
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名古屋工業大学教授 水谷章夫
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