
高校生のための「エネルギーと環境」コンペティション2005
〜都市と田園のeco住宅〜 入賞作品発表
2005年度のコンペティションには、100点を超える作品が集まりました。
多数のご応募ありがとうございました。 厳正な審査の結果、選出された入賞作品を発表いたします。
○審査員特別賞

INDOOR GARDEN/稲葉恵莉衣さん (静岡県立静岡工業高等学校 2年) |
講評: |
この案の魅力は、中央の空間の伸びやかな広がりと、個々の個室や、食事の場、屋上緑化されたテラスとの関係に象徴される「家族が1人1人きままで良い関係をとりあう暮らし」であろう。食事こそ家族の生活の「核」と言う考えにも共感する。核心思考をする人だ。
四季がはっきりと異なる、日本の様な気候・風土では、この案のように、中央の造られ過ぎていない「おおらかな広がり」の中に、通風、日照/日陰のコントロールだけで、季節に応じた、居心地の良い場所を造り分けて、ひとの方が動くと考えた方がエコロジカルである。夏、クーラーの利いた空間が必ずしもひとの健康上良いわけではない、体の表面のみ冷やして、体調を崩すひとも多い。外に出たときに、より暑さを強烈に感じたり、ヒートアイランド現象を引き起こし、いわば「負のいたちごっこ」ですらある。ひとの体の自然の、適応能力も落ちている。この様な考え方は、科学の進歩を楽観的に信奉する人々からは、後退的な、単なる「郷愁」と片づけられがちだが、生産性向上を優先する生産活動の場は空調の機械化もやむをえないが、次世代を育む生活の場である家は、人の自然に対する「適応能力」をも育まれる場であるべきであろうと筆者は考える。さて、だがしかし、その方向で、もっと智恵が集積される事を望みたい。この案はこのままで春、夏、秋は快適に過ごせそうだが冬の策は、乏しい。ソーラー発電によるフロアーヒーテイングを考えていたのであろうか、或いはこの様な外部に近い空間には”家の中の家のような”冬のみ小さく囲われる場を創るのも効果的と思われた。 |
建築家 笠島淑恵
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街の中の風
〜極小地に建つecoハウス〜/大澤翔多さん 青木優希さん
(静岡県立静岡工業高等学校 3年) |
講評: |
部門設定根拠
1 平・立・断面図、模型・敷地写真等が記載されている。
2 A2、1枚の規模作品であり、「設計・デザイン」に該当する。
応募規定(理念)との関係
1 敷地条件である「都市住宅密集地」に適合している。
2 「涼しく過ごせる住宅」について、風、緑、雨水の全てを活用している。
評価(良好事項)
1 全ての応募規定を満たしている。
2 送る風を雨水で温度調整し、炭で湿度調節している。その風を全室に流すシステムが構築されている。
3 西側ルーバーデザインが特徴的である。
4 中庭・樹木やコミュニティースペースに癒しの効果を位置づけている。
5 表現力、模型製作なども良好である。
評価(課題)
1 循環する風の冷化度、低湿度、送量などの実験データを記述する必要性がある。
2 風の流れをもう少し大きく、分りやすく表現すると良い。 |
愛知県立愛知工業高校校長 堀口通安
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ストライプ/入江啓輔さん
(米子工業高等専門学校 3年) |
講評: |
現代の密集した市街地は敷地が狭く建物の周囲には十分な緑を設けることが出来ません。そこで大都市ではエネルギーと環境の視点から屋上緑化や壁面緑化が提唱されています。この案は難しい壁面緑化が美しくエコロジカルな都市景観を生み出す新しい可能性を感じさせる提案となっています。ヨーロッパでは民家の窓台に花々が飾られた美しい家並みが数多く見受けられるのに対して日本の伝統的民家は軒の深い屋根が影を造り出す美しい景観が特徴でした。しかし現代の密集した都市住宅では無機的な壁面が殺風景な風景をつくっています。この案は壁面を季節によって変化するつつじの花台をストライプ状に巡らすというポップで楽しいアイデアの作品です。平面、断面計画の提案が今一歩なのが惜しまれますが、春が来るたびに外観が一斉にピンクのストライプになり、そして新緑となり深い緑に変化するという「時の経過」の概念を外観に取り込んだアイデアを評価したいと思います。 |
建築家
/ 芝浦工業大学教授 堀越英嗣
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花江ちゃんの5日間改革
〜クーラー使わず涼しい夏を〜/奥三奈さん
(愛知県立旭野高等学校 1年) |
講評: |
本作品は,パラレルにしてもよい内容を5日間という時系列的な、つまり、連続的なつながりで、しかも,先(次の日)を期待させるような構成となっており,また、本作品はテレビコマーシャルの脚本内容のような構成に近く、読めば読むほどこの内容がそのまま動きのある映像表現としてイメージされやすくなる。さらに、文章も軽やかで若さから醸し出される瑞々しい感性が素直に表現されている。技術用語についても、丹念によく調べ上げ、しかも、咀嚼し,理解し、自分の言葉として表現し、また、実際に確かめるための実験を行い,その成果も併せてまとめており,完成度の高い作品であると評価される。 |
名古屋工業大学教授 水谷章夫
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