例題5.1
 圧縮強度が21 N/mm2,引張強度が2 N/mm2のコンクリートの立方体がある。このコンクリートに左の図のような一定の圧縮応力度σx を加えたまません断応力度τを増やしてゆく。σx が0, -6, -20 N/mm2 の3つの場合について,モール円を用いてコンクリートが破壊するときのtを計算しなさい。また破壊のパターンを図示しなさい。
(ヒント)σx とτによって生じる引張主応力度が2 N/mm2に達すると引張破壊
が生じ,圧縮主応力度が21 N/mm2 に達すると圧縮破壊が生じる。

(解答) 
(a) σx = 0 の場合:これは図5.7の場合と同じである。まず,τ = 0 での応力状態はモール円で下図(a)のように原点の青い一点で表される。縦軸のτを増やすと原点を中心とした円が拡大する。引張主応力度が2 N/mm2となるとき,すなわちτ = 2 N/mm2のとき引張破壊が生じる。破壊の方向は図5.7と同じく斜め45度方向である。
(b) σx = -6 N/mm2 の場合:τ = 0 での応力状態は図中の青い破線のようにσx = -6 N/mm2 と原点を結ぶ線分を直径とする円で表される。τを増やしていくとこの円が拡大する。引張主応力度が2 N/mm2となる赤い実線まで拡大したとき,円の半径は5 N/mm2となる。したがって,三角形ACOに関するピタゴラスの定理より, のとき引張破壊が生じる。また,である。したがって,破壊の方向は図5.10(b)のようにx軸から時計回りに26.6°の方向になる
(c) σx = -20 N/mm2 の場合:τ = 0 での応力状態は図中の青い破線のようにσx = -20 N/mm2 と原点を結ぶ線分を直径とする円で表される。τを増やすとやはりこの円が拡大する。この場合はσx が大きいため,引張主応力度が2 N/mm2となる前に圧縮主応力度が圧縮強度21 N/mm2に達する。このとき,円の半径は11 N/mm2となる。ピタゴラスの定理より- のとき圧縮破壊が生じる。また-である。したがって,圧縮破壊の方向は図5.10(c)のようにx軸から時計回りに12.3°の方向になる