例題5.3 
 例題4.12で計算した建物の柱で図5.30(a)のように60 mmの変形までせん断破壊が生じないようにしたい。柱のj はせい800 mmの0.8倍, 640 mm とする。横補強筋には降伏強度400N/mm2のD13(断面積127 mm2)を図5.30(b)のように用いる。必要な横補強筋の間隔を計算してみよう。
(ヒント) 曲げ破壊により柱に生じるせん断力はQMu =1.48×106 N である。図5.23(a)によって得られるせん断強度Qu がQMu よりも大きくなるように横補強筋量pwを与えればよい。
(解答) まず,図5.22で定義される変形角Rを評価する必要がある。3mの高さの間で60 mmの変形が生じるわけであるから,変形角Rは60/3000=0.02となる。したがって,式(5.19')の有効係数ν は,

となる。有効圧縮強度νσB は0.33×30=9.9 N/mm2となる。これらの数値を用いて図5.23(b)を描き直すと,図5.32のようになる。図中にはQMu =1.48×106 N も書き込んである。この図よりpwσwy =1.44 N/mm2が必要な横補強筋量となる。σwy =400 N/mm2より,pw =0.0036となる。また,図5.30(b)よりawはD13の断面積の2倍でaw= 2×127 = 254mm2である。したがって式(5.15)より

となる。88mmというのは中途半端であり施工しにくいので,数字を安全側に丸めて80mm間隔といった設計になろう。実際の建物の設計ではこのほかに考慮しなければならないことがいくつかあってもう少し煩雑であるが,おおむねこの例題と同様の手順で横補強筋間隔が算定される。なお,設計図書では,2-D13の80mm間隔での配筋を2-D13 @80あるいは□D13 @80と表現する。