Last revised on 11 Jan. 2005

空間における期待感に関する研究

坂道空間における期待感と物理量の関係
-CGアニメーションを用いた評価分析-
 

研究概要
 本研究は、街路形態のひとつである坂道空間において、動的魅力である期待感と物的条件の関係を明確化することを目的としている。現実空間における坂道の空間構成、空間形態を把握するため、名古屋市において現地調査を行った。抽出された坂道空間から、建物に囲まれた直線空間をモデル空間としてCGアニメーションを作成し、マグニチュード推定法を用いて期待感の評価実験を行った。その結果、期待感は幅員、坂道空間、坂道水平長さ、坂道勾配の関係によって程よい囲まれ感が空間に生じるとき強まり、坂道勾配、坂道鉛直高さ幅員比、坂道水平長さ幅員比、坂道空間体積で説明できることが明らかになった。

 

研究の流れ
 現地調査―モデル実験―期待感の予測―結果
 

1<現地調査>
現実空間における坂道の空間形態空間構成を把握するため、名古屋市(鶴舞地区、川名地区、八事地区、本山地区)における現地調査(坂道の幅員、傾斜長さ、勾配の測定)を行い、70の坂道空間を抽出した。
 
 
2<モデル実験>

(モデル空間の選定)
現地調査による空間構成と形状をもとに、実験に用いるモデル空間を選定し、水平空間と坂道空間で構成した。また変数を復員W、坂道水平長さL、坂道勾配iとし、合計108パターンを選定した。

(実験方法)
一般的な歩行速度にあわせた坂道空間手前までのCGアニメーションを作成し、被験者(建築学生15名)を7グループに分け、それらを各グループ別にランダムな順序で表示した。期待感は「先の空間に行ってみたい、導かれる、吸い込まれる」といった動的魅力と定義し、標準刺激を100としたマグニチュード推定法により空間パターンの評価実験を行った。


実験に用いたCGアニメーション映像
 
3<期待感の予測>
空間パターン別に対数変換した期待感の幾何平均値を目的変数、物的変量を説明変数として重回帰分析を行い、期待感の予測式を求めた。既往研究の知見より坂道空間の期待感は、空間が変化することによる不可視領域の意識やシークエンスの変化、視界上昇による空間開放から生じることから、認識している坂道の空間変化量に着目し、高さ方向(坂道鉛直高さ幅員比H/W)、奥行き方向(坂道水平長さ幅員比L/W)、坂道空間体積Vを説明変数とした。その結果、重相関係数0.92の予測式が得られた。

重回帰分析に用いた説明変数
 
4<結果>
研究で対象とした範囲で以下の結論が得られた。

(1) 長さによって期待感を最大にする坂道勾配は異なり、坂道水平長さ長い方が期待感を最大にする坂道勾配は大きくなる。
また坂道水平長さが短い方が期待感の最大値は高まる。
(2) 幅員によって期待感の変化量が異なり、また幅員が広いほうが期待感を最大にする坂道勾配は大きくなる。
(3) 坂道勾配が大きい場合は幅員が広い方が、坂道勾配が小さい場合は幅員が狭い方が期待感は強まる。
(4) 物的変数である幅員、坂道水平長さ、坂道勾配の関係によって程よい囲まれ感が空間に生じるとき、期待感は強まる。
(5) 期待感の予測式を求めた結果、期待感は坂道勾配、坂道鉛直高さ幅員比、坂道水平長さ幅員比、坂道空間体積で説明できる。

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