木造住宅の耐震診断と耐震補強


 このページでは,大地震時に最も大きな被害の予想される古い木造住宅の耐震診断と耐震補強についての情報を,一般の住宅所有者の方向けにまとめています.来たるべき大地震に備え,ご自宅の診断や補強をお考えの方の参考になれば幸いです.

木造住宅の耐震に関連して発表した一般向け資料

「木造住宅の巨大地震対策」(名古屋工業会会誌「ごきそ」2005/02)
「木造住宅の耐震リフォーム促進に向けた技術的課題」(建築学会東海支部シンポジウム資料2005/02)
「木造住宅の耐震リフォーム指南」(日本工業出版「住まいと電化」2006/01)


よくあるご質問Q&A

Q.家の耐震性はどうやったら判断できますか?

A.木造住宅の耐震診断方法には,一般所有者の方でも簡単にできる「簡易診断法」と,建築士などが行う「精密診断法」とがあります.簡易診断は簡単ですが,あくまでもおおまかな目安でしかありません.簡易診断で心配な結果が出たら,精密診断をお薦めします.精密診断を行うには一般的には数万円程度の費用がかかりますが,各自治体などでは診断料を補助してくれる制度があります.詳細は市町村の窓口にお尋ね下さい.
 なお,過去の地震被害例から全体的に見ると,昭和56年以前に建てられた在来軸組工法の木造住宅に大きな被害が出ています.

Q.自分の家を耐震性のある家にするにはどうすればいいですか?

A.「耐震性のある家」とは具体的にどんな家をお考えでしょうか?
 もしも「少なくとも命だけは助かる家」とお考えであれば,壁の量と配置をご確認下さい.必要な性能が足りなければ,壁の増設,あるいは壁の補強をお考え下さい.
 「大地震後も軽微な修理だけでそのまま住み続けられる家」とお考えでしたら,壁の量と配置を十分なものにすることに加え,基礎,床,屋根などの補強を目標とする性能に応じてする必要が出てきます.いずれにしても,まずは壁の量と配置を満足なものにすることが最も重要です.

Q.耐震補強で最も優先順位の高い補強箇所はどこですか?

A.壁です.木造住宅が,地震や風など横からの力に抵抗するのは壁の役目です.壁を有効に働かせるために基礎,床,小屋などがあるとお考え下さい.したがって,壁の量や配置が不十分なのにそれに手をつけず,基礎や床下,天井裏だけを補強するような方法はありえません.

Q.耐震補強をすればどんな地震が来ても大丈夫ですか?

A.地震は自然現象であり,どんな大きさのものが来るかは誰にもわかりません.安全に「絶対」という言葉はないことを十分ご理解下さい.ただし,耐震補強をすれば,地震の時に倒壊した家の下敷きになって命を失う可能性は確実に減少します.この可能性の程度を色々な情報から実感していただき,それによる安心の程度が満足できるものかどうかでご判断下さい.

Q.どの業者に頼めばいいでしょうか?

A.自動車や家電製品のような量産品と違い,建築物はすべてが単品生産です.カタログを並べていちばんいいと思う業者を選ぶというのは建築物では無理な話です.建築物を建てるときに最も重要なことは,施主と設計者(あるいは施工者)の信頼関係です.耐震補強工事でも同じことです.その業者と信頼できる関係が持てそうかどうか,納得のいくまで話し合って判断して下さい.

Q.無料で耐震診断をしてくれた業者に補強を勧められています.どうしたらいいでしょうか?

A.無料で耐震診断をする訪問業者がすべて悪徳業者というわけではありませんが,必要以上に危機感をあおったり,契約を急ぐ場合は要注意です.耐震補強の基礎的な知識を所有者自らが身につけ,補強方法と補強の効果について納得のいく説明をしてくれる業者かどうかをしっかりと見極めましょう.

Q.そもそも大地震って来るんですか?

A.地震は自然現象ですから,100%の予知はできません.ただし,いろいろな情報や観測から,これから30年の間に東南海地震ならば50%,南海地震ならば40%の確率で来ることがわかっています.これら情報から判断し,決断することが私たちに求められているのです.

Q.地震で死んでも構わないから耐震補強なんてしません.

A.あなた以外誰にも迷惑がかからなければもう何もお話しすることはありません.でも,一緒にお住まいのご家族も同じことを考えていらっしゃいますか? あなたの家が壊れたら,ご近所に迷惑にはなりませんか? 防災活動の妨げになりませんか? あなたが死んでだれも涙する人はいませんか? 

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